私が初めてオーロラを見たのは、北極圏をゆく飛行機からでした。
まだ、日本からヨーロッパへの直行便がなかった頃。当時「北回り」と呼ばれていた、アンカレッジ経由ヨーロッパ便での出来事です。
漆黒の空に浮かぶ巨大な光が、命あるもののように揺れ動いている。冷たい窓に頬を寄せたまま、戦慄に包まれたことを、今もよく憶えています。
振り返ってみれば、あのときのオーロラが、その後、私の旅を導くことになる"旅の魔力"だったと、思えてなりません。
「いつの日か、自分に降り注ぐオーロラを見上げてみたい」。抱き続けた願いがかなったのは、山ノリと訪れたノルウェーの北極圏です。
トロムソから始まる北極圏の旅
2009年の冬、私たちは、スカンジナビア政府観光局が主催したノルウェー北部への取材旅に参加。テーマは「パワー・オブ・ネイチャー」。北極海に面したノルウェー沿岸をたどりながら、北極圏の大自然に親しむ旅です。
スタートは北極圏最大の街、トロムソ。フィヨルドと雄大な山並みに囲まれ、海を臨む街は、凍れる雪景色のなかにありました。
トロムソは古くから漁港や貿易港として栄え、かつて「北のパリ」とも呼ばれたところ。古き良き時代の建物がのこる街は、どこかノスタルジックで、北欧ならではの魅力にあふれています。
美食の地でもあり、北極圏が育む食材を使った"北極キュイジーヌ"も見逃せません。意外かもしれませんが、北極圏は食材の宝庫。豊穣な北極海では魚介やクジラが揚がり、深淵な森からはトナカイや野鳥が届きます。
北極キュイジーヌの粋を味わいたいなら、ノルウェー王族にも愛されるレストラン"エマズ・キッチン"へ。
名物は、新鮮なキングクラブや、軽くスモークしたクジラのカルパッチョ。森のベリーのソースが香しい、トナカイのロースト。一皿の向こうに壮大な自然が浮かび上がるような、力みなぎる料理に驚かされることでしょう。
( エマズ・キッチン http://www.emmasdrommekjokken.no/)
フィヨルドに舞うオーロラと出合う
極地を取り囲む"オーロラ・ベルト(北緯67-69度間)"に位置するトロムソは、オーロラが日常に溶け込んでいる地。夜になれば、街中でも、住宅街でも、見上げる空にオーロラは現れるのです。
世界各国でオーロラ撮影に挑んできた山ノリによれば、オーロラ観測地の多くは酷寒の僻地で、オーロラを捉えるのは厳しい環境にある。その点、ここは街中で快適にオーロラ観察ができる。また、フィヨルドの谷間では水面にオーロラが映り込む。
世界的にも希少で、素晴らしい風景なのだ、と。
トロムソ到着の日。山ノリの言葉通り、凍りつくフィヨルドの上空にオーロラが。
それは、青白い炎の群れにも、光の砂嵐にも見える。光は帯やヴェールのように形を変えながら、走り、広がり、波打ち、止まることがない。
そして突然、地上に降り注ぎ、余韻を残して、またたく間に消え去ってゆきました。やはり、命あるもののように。
「オーロラには争い事を解決する神秘的な力がある」
スカンジナビア半島の先住民・サーメの人々の間には、そんな伝説があるそうです。
確かに。人の心の奥底を照らし出し、何かを呼び覚ます力が、オーロラにはあるのだと。
永久凍土を走り、北極海に浮かぶ
この旅ではオーロラを始め、心身の糧となるような「パワー・オブ・ネイチャー」を多く得ることができました。
昔ながらの漁師小屋を改築した水上ロッジ"ロルブー"に泊まり、耐厳冬装備で漁師とともに北極海に乗り出し、キングクラブ漁にも挑戦。氷の海での漁は命がけ。まさに「蟹工船」の世界です。そして、北極海を肌で感じる重労働のごほうびは、ロルブーでのキングクラブ三昧!
陸上では、スノーモービルでツンドラ(凍原)を冒険するスノー・サファリや犬ぞり。
すべてが、自然との一体感を楽しむ、を超え、人間であることを突きつけられ、生命が身に染みるほどの体験でした。
なかでも、サーメの人に導かれる犬ぞりは忘れられません。音もない凍野を、ハスキー犬たちと気持ちを合わせて分け入ってゆく。白い地平線が太陽を飲み込む夕暮れを眺め、星のドームとオーロラに包まれながら、無心や永遠が身近に。
休息はサーメ式テント"ラヴォ"で。焚き火を囲み、トナカイのシチューであたたまり、サーメの伝説や音楽に耳を傾けます。サーメは古来、トナカイなどの放牧を営み、北欧に暮らした国境なき民族。自然と深く結びついた伝統や文化は、日本人にとってもなじみ深いものでしょう。
北極圏で生きる北ノルウェー人たちは、過酷な状況下でも、冷静でたくましく、私たちを導いてくれました。厳しい環境にある北部において、子供たちは幼いときから、屋外で生き抜く術を親から教え込まれるといいます。生活の原点が自然の中で受け継がれている。それが、いかに人間を力強くするか。身をもって実感しました。





「世界一美しい船旅」で地球の頂上へ
トロムソからはフッティルーテン社の船に乗り、沿岸の港町を訪れつつ、ロシア国境へ。近海は極北でありながら、暖流の影響により、冬期でもクルーズが可能なのです。
フッティルーテンはノルウェーの南・ベルゲンからロシア国境までの34の港を結ぶ「世界最北の定期航路」。ゴージャスな大型船からクラシカルな中型船まで、運航する船は多彩。ダイナミックなフィヨルドと北極圏を眺める「世界一美しい船旅」として憧れを集めています。
冬のクルーズではオーロラが大きな魅力。私たちは夜、デッキで突き刺す冷風に耐え、オーロラを待つことに。
山ノリがカメラを構えた、そのとき。暗闇に浮かぶ白い稜線上に、幻想的な光のベールが。揺らぐ光は龍のように、すばやく闇を駆け、宇宙へと昇っていきました。
哲学者アランは著書『幸福論』における「旅」の章で、こう記しています。
「習慣の中に眠り込まないためには、ゆたかで変化に富んだ一つの光景を選びさえすればよい。」(岩波文庫 神谷幹夫訳)
2012年、新しき年も、旅の恵みがありますように。
写真・山口規子 文・上保雅美


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オーロラ観測の拠点、トロムソへ 足を運んでみてはいかがでしょうか
モデルスケジュールをお伝え致します
スカンジナビア航空利用
往路:成田(12:30)⇒ コペンハーゲン(16:05)(17:10)⇒オスロー(18:20)(19:55)⇒トロムソ(21:40)
復路:トロムソ(12:50)⇒オスロー(14:40)
復路:オスロー(13:45)⇒コペンハーゲン(14:55)(15:45)⇒成田(09:35)*翌日着
***お昼に東京を出発すれば、なんと夜には、トロムソへ到着なのです。
トロムソでは
オーロラツアー:トロムソより車で約20分のホルムスレット農場まで送迎つき
馬ぞりを体験した後、サーメ人のテントで温かいスープとワッフルをいただき、オーロラ神話のお話を聞いたり、外で雪遊びやそりを楽しみながらオーロラを待ちます。
犬ぞりツアー:トロムソ市内の宿泊ホテルより約30分離れた野外活動センターへ。
ガイドが120頭のハスキー犬とともに迎えてくれます。防寒着と防寒靴の貸し出し付き。山や谷を駆け抜け、広大な自然が体験できます。運が良ければ、トナカイの群れに遭遇することも。サーメ人テントの焚き火で暖をとり、夜には夕食、コーヒーと「レフセ」(ノルウェー風パンケーキ)を賞味できます。
日常では体験出来ないようなツアーが ここ、北緯70度に位置する北極圏最大の町 トロムソでは可能です
2012年、皆様にとって ゆたかで変化に富んだ一つの光景を探しに出掛けませんか?
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